nfs on NAS-01G

前々からパソコンのデータのバックアップには腐心していたのだけれど、思うことあって家庭用の NAS を導入することにした。

購入したのは Planex の NAS-01G。
決めた理由は、
- 400GB の ATA ドライブが余っていたので自作型が前提
- RAID 対応のものが欲しかったけど、みなディスコンになってた
- Serial ATA じゃないので Kuro Box/PROは選べず
- Planex Communication なのでそこそこ大丈夫そう
- amazon で買える
・・・といったところ。

家に届いた NAS-01G は「機械としてはそれなりの出来」という印象。ところが、いざハードディスクを組み込んでセットアップしようとするといたるところに罠があることに気づかされる。
まず、一緒についてくる設定ソフト(Windows ネイティブ)の使い勝手がこれ以上ないってくらいに悪い。何度やってもこのソフトからネットワークの設定ができなかったので、仕方がなくIPアドレスを調べてブラウザで設定画面を開いて自分で設定した。

ブラウザで開ける設定画面も怪しさイッパイ。中国に丸投げしているであろうと思われる胡散臭い日本語や、ちょっと設定を変えただけで有無を言わせず samba が再起動されたりする徹底した不親切設計。
Bit Torrent への対応を謳っている最新の Firmware も罠だらけで、ウェブの設定画面の特定ボタンを押すだけで二度と設定画面にアクセスできなくなったり(再起動で復活)・・・と茶目っ気たっぷり。もちろん、こんな状態では Bit Torrent も何もあったものじゃない。
一般的なPCの周辺機器という気持ちで購入した人は、みな心から後悔したことだろう。

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さて、ここからが本題。
今回この NAS を買った目的のひとつはデータのバックアップなのだが、もうひとつには自宅の24時間稼動の Linux サーバ(ThinkPad 570)でmpd (Music Player Daemon)を利用したジュークボックスを完成するため、音楽ファイルを好きなだけ置ける場所を確保する・・・というのがある。

NAS-01G はデフォルト状態だと samba 経由でしかファイルの共有ができないので、Linux からアクセスするためには smbmount を使うことになる。が、smbmount は実装的にこなれておらず、mount してからアクセスしようとすると seg fault で落ちたりする。頑張っても常用には適さない香りがぷんぷんするので、裏技として nfs を使うことを思いついた。

当たり前だが、デフォルト状態のファームウェアにはそんな機能はないので、自分で色々仕込むことになる。

＊注意＊
ここから先で紹介している方法は、自分が何をやっているか分かっている人以外にはオススメできません。メーカーが想定していない動作を行わせることで、製品に不具合が起きたり取り返しのつかないことがおきる可能性があります。万が一そのような事態が起きても、著者は責任を負えませんのでご了承下さい。

まず、NAS-01G は中国文化圏(台湾?)でも販売されているらしく、Google先生を"NAS-01G telnet"で漁るとこんなページが引っかかる。Bit Torrent 機能に関する説明が終わるページの真ん中へんあたりに telnet を仕込む裏技が紹介されているので、難解な漢字に混じるアルファベットを頼りに解読を試みる。

NAS-01G に telnet できるようにするには、http://www.sendspace.com/file/pryxqs
に転がっているパッケージを拾ってきて怪しげなバックドアを仕込む必要がある。
ダウンロードしてきた rar ファイルを Share ディレクトリ直下に展開して再起動すると、アラ不思議 telnetd が立ち上がるようになる。telnet で繋ごうとするとまず root のパスワードを聞かれるので無視して Enter。今度はユーザー名とパスワードを聞かれるので all/all でログインできる。

all は全ての権限を持ったユーザーらしく、設定関係のファイルやディレクトリ構造に問題なくアクセスできる。NAS-01G に載っている Linux では、よく使われるコマンド群をひとつのバイナリにまとめた busybox なるものが使われているのが特徴だ。

同じページには chroot による debian 環境の構築方法が書いてあって、これをフォローしていくと apt-get で大抵のものが引っ張ってこれる便利環境が構築できる(300MB くらいのパッケージファイルをダウンロードする必要アリ)。わざわざこっちに翻訳するほどのこともないので、ここでは debian 環境を構築できたものとして話を進める。

chroot する前のディレクトリ構造に chroot 後のシステムからアクセスするためには mount -o bind するのが正解。-o bind は最近の Linux だと obsolete なオプションなのだが(-bind が普通)、 busybox ではこれしかサポートされていないようだ。

NAS-01G で使われている Linux カーネルでは nfs のサポートが有効になっていないので nfs-user-server を使うことになる。 apt-get install nfs-user-server でインストールすると必要なものも勝手に入るので、例によって /etc/exports を書き換えた上で
nfs-common
portmap
nfs-user-server
の順に立ち上げればサーバ側の準備はOK。

クライアント側では portmap と nfslock を立ち上げておく必要があるので、これらのサービスが立ち上がっていないのであれば起動しておく。
/etc/fstab に以下の行を追加しておき、mount /mnt/nfs して /mnt/nfs の下に NAS-01G のディレクトリ構造が見えるようになれば成功。

nas01g:/export /mnt/nfs nfs rsize=8192,wsize=8 192,hard,intr 0 0

手元の環境では、ここで新たなる問題が発生。
Linux サーバのファイルシステムでは日本語のファイル名が euc になるような設定になっているのだが、NAS-01G の samba の設定は
character set = ISO8859-15
coding system = sjis
となっていて Samba 経由で送られてきた SJIS のファイル名がそのまま保存されている。このため、既においてあった日本語名のファイルは Linux サーバから nfs 経由でアクセスできなくなっていた。

まだ NAS-01G においてあるファイルは全て取り返しのつくものなので、既に置いてあるもののファイル名を全て euc に統一することにして解決を図る。
NAS-01G の smb.conf で
coding system = euc
に変更して /etc/smb restart すると、 samba 経由で既存の日本語名のファイルにアクセスできなくなる。
新しいファイルを置くと euc のファイル名で保存されるようになっていることが確認できたので、このあたりを参考にして、NAS-01G の共有ディレクトリに置いてあるファイルの名前を一括 sjis -> euc に変換。
結果、問題なく日本語名のファイルも読み書きできるようになった。

もう少し頑張ればもっと色々できそうだが、とりあえず期待していた環境は構築できたのでこれで一段落。ウホウホな人でもボタン一発で使えるようになりつつあるPCに比べると、まだまだ自作型の NAS はそれなりに敷居が高くて楽しめる(?)ようだ。