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喪男の哲学史

「恋愛至上主義に毒された現代人がいかに救われるべきか、そしてどうしてこんなことになっちゃっているのか」をモテ・非モテという分かりやすい対立軸を利用して熱く語った本。

はっきり言って、これ以上分かりやすくて優れた哲学入門はないだろう。よくある「哲学入門」やら「はじめての哲学」、そして断片的に有名な哲学者(プラトン、アリストテレス、デカルト、ニーチェ・・・)の本をかじるよりも、この本を読んでいかに哲学という活動が無駄に沢山の人を迷わせてきたかを肝に銘じておくほうがよほどタメになる。哲学がいかに回りくどい形で紆余曲折を経て無力化してきたかを知り、それでも哲学に救いを求めたい人は勝手に求めればよいのだ。

とにかく「これでもかっ」とばかりにオタク受けするキーワードが散りばめられており、丁寧かつ笑える脚注を拾っていけばそっち方面の素養のない人でも理解できる。そして素養のある人であれば、より深くこの本を楽しめる。そっち方面に免疫のない人にはおすすめできないが、一度でも哲学・宗教・心理学に興味を持って自分で学ぶ努力をした人であれば笑いあり・感動ありの充実した読書になること請け合いである。

非モテ属性のついた人間を"喪男(モダン)"(または喪女)と定義することから始まり、歴史に名を残した哲学者(及び一部の宗教者、科学者)がいかに"喪男"であったかを明らかにしながら、彼らの苦しみと彼らが生み出した(そして増幅・改悪された)哲学・宗教がいかに世間に影響を与えてきてしまったかを歴史の順番どおりに説明している。人類を代表する喪男達が数千年もかけて育んできた"哲学"を一冊で説明しよう・・・という試みは伊達ではなく、情報密度はめちゃめちゃ濃いので覚悟して読む必要はあるだろう。最近は読書フィーバーなので週に3,4冊のペースで読んでいたが、この本はこれだけに集中して3日かかった。

ハマる人であればはじめの数ページを読むだけで背中にエレクトリック・サンダーボルトが走り、その瞬間から読み終えるまで本が手放せなくなる羽目になるであろう、素晴らしいパワーに満ち溢れた本。

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