パルコ歌舞伎 決闘!高田馬場
三谷幸喜さんと若手の歌舞伎役者によるコラボレーション。2006 年の 3月に PARCO 劇場で上演されたもので、チケットが入手できずに見逃していたので DVD で見ることにした。
主人公は中山安兵衛。後の忠臣蔵義士のうちの一人で、叔父の果たし合いの助太刀で敵数名を討ち取ったとされる「高田馬場の決闘」が有名。この歌舞伎も「高田馬場の決闘」が物語の主軸にあるのだけれど、「酒を飲んでいて叔父の果たし合いに気付かず、叔父の置き手紙を見て慌てて飛び出していった」という史実を面白おかしく脚色した設定となっている。
全体的に、歌舞伎らしい演出を効果的に使いながら、現代劇のようなスムースさと分かりやすさを前面に出しているように思う。楽しい台詞がぽんぽん出てきて、役者さんたちはあっちへこっちへと飛び回り、さらにはフラッシュバックのシーンまで出てくる・・・という憎らしいほど上手な脚本。若手の役者さん達も、楽しい脚本に釣られるようにして、演技を存分に楽しんでいる。
染五郎さんの「怠け者で酒癖が悪いけど実は・・・」という安兵衛はなかなか魅力的でハマっている。亀治郎さんの演技は相変わらず絶好調で、型がしっかりしている上に一癖も二癖もあってハチャメチャに楽しい。川島雄三監督の映画における小沢昭一さんみたいな人だ。
実に充実した舞台で、笑わされ続けていたらいつの間にか終わってしまった・・・という感じ。ただ、素晴らしく楽しんだのも事実だけれど、歌舞伎の面白さはまだまだこんなもんじゃないぜ、と感じたのも事実。
歌舞伎の凄さ(恐ろしさ)っていうのは、同じ脚本が繰り返し繰り返し上演されていくことで、ひとつひとつの演技が洗練されていって物凄い高みに到達できることなんじゃないかと思う。現代において歌舞伎が理解されにくくなっているのは、単純に昔の人が共有していた時代のコンテキスト(昔の人にとっての義経、勘平とお軽、それに曽我兄弟なんかは、教わることもなく誰もが知っている常識のようなものだったはず)が前提になっているからで、そのあたりをサラッと理解してしまえば、日本人にとってこれほど身近で、魅力的な舞台はないのだ。
The comments to this entry are closed.
Comments