The Flying Scotsman / Autobiography of Graeme Obree
独創的なアイディアと不断の努力によって、自転車競技で数々の記録を樹立したスコットランド人、グレアム・オブリーの自伝の映画化。日本では未公開で、DVDにもならなそうだったのでamazon.comからDVDをゲットして鑑賞。
空気抵抗を最小限に押さえるべく、オブリーポジションと呼ばれる短いハンドルバーの上に胸を押しつける独特のフォームを考案し、1993年と1994年にアワーレコード(1時間トラックを走り続けてどれだけ距離を伸ばせるかを競う)の世界記録を樹立するが「乗車姿勢が不安定で危険」という理由でオブリーポジションは禁止とされてしまう。それでも諦めない彼は、今度はスーパーマンポジションと呼ばれる腕を大きく前に投げ出すフォームを利用して、1995年にワールドチャンピオンに返り咲くのだった・・・というお話。
子供の頃からいじめられっ子だったりして、精神的にも不安定だった彼が友人や家族との触れあいを通じて記録に挑戦していく姿もなかなかうまくまとめられている。「自分の価値を認めてもらいたい」と願う彼のひたむきな思いが、あの独創的なポジションと「合理的思考の勝利」に結実したように感じられた。映画の中の風景がいかにもスコットランド的な寒々しい雰囲気だったりするところも生々しくてグッド。
スコットランドは実に独特なポジションを貫いてきた国で、昔からイングランドに蹂躙され続けながらもめげずに頑張り続けたせいか、輩出する人物にも渋くてイケてる人物が多い。経済学者のアダム・スミスや発明家のグラハム・ベル、アーサー・コナン・ドイルらもスコットランド出身だし、西国立志編のサミュエル・スマイルズもそう。大英帝国の礎である近代化を推し進める原動力となった人物(主にエンジニア)にもスコットランド出身者が多いという。
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自転車乗りは日ごろから身に沁みて分かっていることだけれど、自転車で高速に走り続けるためには、空気抵抗を最小限にする努力が極めて重要になってくる。ロードレースで集団の方が有利なのは、沢山の選手が交代で一番体力を食う先頭を引っ張ることができるからだし、リカンベントが人力による乗り物の最高速度記録をもっているのも同じ理由による。
空気抵抗はCd値x空気の密度x前面投影面積x速度^2/2で算出できるが、この中で人間がコントロールできるファクターは実質的に前面投影面積のみで、これをいかに小さくするかが空気抵抗を減らす努力のほとんど全てといってもよい。
ハンドルポジション以外に彼がこだわった点として
- Qファクター(ペダリングする両足の間隔)を最小限にするため、BB(クランクの軸)を可能な限り薄くしてチェーンステイを斜めに取り付けた
- ペダリングで上下運動する膝がフレームに当たらないようにするため、極端なスローピングフレームを採用した
・・・といったあたりが挙げられる。
記録を狙うためとはいえ、あっさりとそれまでの常識を覆して自転車の全く異なる形を提示した人として、オブリーに学ぶことは多い。
オブリーのすごいところは、まともなスポンサーやプロのメーカーにほとんど頼らず、風洞実験もせずに、自力でポジションを考案し、バイクを組み上げて世界記録に挑戦したことだ。もちろん、マチュアサイクリストとしてトップレベルにいた彼だからこそ、記録に繋がるようなライドができた、という点も忘れてはいけないだろう。
トラックで走行する場面では、本物のオブリーが走っているそうなので、普段から空気抵抗に悩まされているサイクリストは刮目して見るべし!
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自転車と空気抵抗に関しては、自転車乗り界隈では有名なブログLIVESTRONG MODERATELY.に素敵なエントリーがあるので、是非参照されたし。
オブリーポジションによる走行は、1993年に彼がアワーレコードに挑戦している映像がyoutubeにあるので、興味のある方は覗いてみるとよいだろう。
Obree本人が映画について色々と語ってる動画もyoutubeにあるが、強烈なスコティッシュアクセントなのでネイティブのイングリッシュスピーカーでも理解不能な可能性が高い。一応、自分はスコットランドに近い北イングランドの田舎町Durhamの高校にいっていたので、30%くらい理解することができた・・・。


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