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「恋する天才科学者」という本がなかなか面白かった。
恋する天才科学者 内田 麻理香 講談社 2007-12-20 売り上げランキング : 68788 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
気軽に読める「天才科学者変態伝」(あるいは「天才科学者を“男”として見るとどうなるだろう評伝」)で、
(科学に)恋する天才科学者
(誰かに)恋する天才科学者
(著者が)恋する天才科学者
・・・という三重の意味をもった題名の通り、愛すべきダメ男であり、人間的に癖だらけの天才科学者たちを著者の独断と偏見で選び、面白おかしく紹介している。ニュートンからファインマン、ダーウィンから南方熊楠まで、という守備範囲の広さがなかなかナイス。
とはいえ、ゴシップネタが多めだったりとか、インパクトが強めだったりする科学者が優先して選ばれているので、優等生タイプの普通っぽい科学者がのってないのが少し寂しかったりもする。
アインシュタインが死ぬまで女ったらしだったってのは有名な話だし、ニュートンが猛烈な女嫌いだったとか、ヒンドゥー教にハマってた浮気ホイホイシュレーディンガーとか、20才で死んじゃったガロアとか、科学者にはいろんなタイプの(エキセントリックな)人がいて面白い。著名な科学者の面白おかしいネタを拾い上げてあ~だこ~だとやるだけなら誰にでもできるけど、その人たちの研究成果や研究に対する態度、そしてその生き様からあふれ出てくるエッセンス(人となり)がきちんと描かれていて、適度にバランスが取れているところがよかった。
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著者と同じく、自分もファインマン・ラブ(もちろん性的な意味ではなく)な人なので、彼の詳しい生い立ちについて書かれている部分はなかなか楽しく読めた。
ファインマンさんの本というと、
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) リチャード P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子 岩波書店 2000-01 売り上げランキング : 126 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
が抜群に面白いし、よく知られている。
これの上・下巻と、困ります、ファインマンさんあたりを一通り読んだ人におすすめしたいのが「ファインマンさんベストエッセイ」。
「ファインマンさん」シリーズが、ファインマンの友人であるラルフ・レイトンによる聞き書きであり、(厳密な意味での)ファインマン本人による著作ではないのに対して、これに収められている文章は、どれも彼の手によるもの。
ファインマンさんベストエッセイ リチャード・P. ファインマン Richard P. Feynman 大貫 昌子 岩波書店 2001-03 売り上げランキング : 70273 おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本の中で特に注目すべきなのが、1986年に発生したチャレンジャー号の事故の調査委員会の一人として彼がまとめた報告書。
事故の真相究明のためにアメリカ中を飛び回り、低温状態のOリングが硬化したこそが事故の原因であることを突き止めた彼は、この報告書の中で成功を急ぐあまりに安全を切り捨て続けたNASAの体制を真正面から批判している。
事実をありのままに見て、できる限り裏づけをとって、不確実性を排除することこそが科学者の本分であるとするならば、ファインマンは実に誠実にそのやり方を守ったのだなぁ、と心から感服してしまう。
大抵の人間にとって、正しいやり方を見抜くことはそう難しいことではない(By セント・オブ・ウーマン)。
でも、その正しさをきちんと守りながら現実の世界と対峙し続けるためには、途方もない努力や忍耐が必要になる。
自らの能力をフル活用して、目の前に見える「面白いこと」や「直視すべきもの」と遊び・戯れ、闘い続けたファインマンは、やはり自分にとって最高にカッコよい人だなぁ、と改めて思った。